第4の波

知識経済

OECDは世界の経済がKnowledge Economy(知識経済)の時代に移りつつあるというレポートを発表した。知識経済とは、知識(knowledge)と情報(information)の生産、流通、利用に直接的に基盤を置く経済を言う。〔OECD『The Knowledge-based Economy』 〕

コンピュータ、エレクトロニクス、航空宇宙などのハイテク産業の生産と雇用が大きく拡大し、教育、通信、情報などの知識集約型サービス部門の成長が著しい。コンピュータと情報通信ネットワークに支えられた情報化社会が進むに伴い、ハイテク産業の生産と雇用が拡大し、教育・通信・情報などの知識集約型サービス部門の成長が著しい。情報化の進展に伴い、知識の生産・流通・利用を基盤とするイノベーションに従来よりも強く依存する。産業界のR&Dは全要素生産性に対して顕著なインパクトを与える。知識経済では技術進歩が経済成長により重要となる。

工業経済では、ハードな財、製品の生産と需要が経済の中心だったが、知識経済では、サービスやコンテンツといったソフトな生産物に重点が移る。サービスやコンテンツの開発や生産は比較的少ない資金で済む。このために起業化はやり易くなった。IT分野でベンチャー企業が活発に生まれるのはこのためである。リスクが減ると同時に、ビジネス・モデルの作り方によって、大きな収益を上げることのできるケースも増えてきた。

IT分野のビジネス開発は独創的なアルゴリズム、プログラムの創出がカギを握る。ごく少数の天才が巨万の富を得ることも可能になる。これも「知識経済」のもう一つの特徴と考えられる。

このようなことから、「知識経済」下ではイノベーションの成功者と普通の人との収入の格差は広がる。イノベーションの様相が大きく変わると考えられるのである。

 

「第3の波」か「第4の波」か

知識経済への移行は、工業化社会から次の社会への大きな転換への最初のステージと考えられている。

『第3の波』と『未来の衝撃』はアルビン・トフラーが著した本のタイトルである。彼は社会の在り方を大きく変える第3の大波がわれわれ人類を襲おうとしている。人類はそれに備えなければならないと言ったのである。第1の波は約1万年前の農業の始まり、第2の波が産業革命からの工業化である。

しかし、われわれ人類の長い歴史の中では、第1の大波は4万年前の投擲器の発明とそれを使用した狩猟技術の進歩だとなる。とすると、第2の波は農業化、第3の波が工業化となり、次の波は第4になる。

トフラーと同じ時期、ダニエル・ベルは『脱工業化社会の到来』を、堺屋太一は『知価革命』を、ピーター・ドラッカーは『ポスト資本主義社会』を出している。いずれにせよ、20世紀末から21世紀前半にかけて、産業革命に匹敵するような大きな変革が起こりつつあるという認識は一般化している。

トフラーは、この大きな変革を波に例えた。この波は産業革命のときのように、既に確立している権威や秩序を打ち崩し、社会に少なからぬ混乱をもたらすと考えられる。彼はこの大波の到来に十分な備えがあるのかと世に問うたのである。

日本社会が現在、直面している問題は時代を変えるこの大波と大いに関係がある。日本の社会は大波の到来にほとんど備えてこなかったのではないか。それが長期にわたる経済の停滞と急激な少子高齢化のインパクトではないのか。

 

経済成長は続くのか

既に述べたように、経済成長は産業革命から始まった。それ以来、経済成長の速度は加速しピークに達した後、減速して今日に至っている。世界の工業先進諸国は日本ばかりでなくすべてが成長率の低迷に悩まされている。収穫逓減の法則から脱却できないのか。工業化社会が飽和に達しても経済成長は続くのか。

このような問題に答えを見出そうとしたのが1980年代後半に登場した「内生的経済成長論」である。技術進歩は経済活動の内生的因子と考えられるので、技術進歩を持続させることができる。これが可能な限り、経済は永続的に成長すると主張しているのである〔チャールス・I・ジョーンズ『経済成長理論入門』〕。AKモデルやローマーのモデルが知られている。

欧米では、研究開発活動による知識ストックとアイデアの増加がこれからの経済成長の重要な要因であるとする「ニュー・エコノミー」論がアメリカにおけるIT投資の拡大による経済の活性化を背景に広がりを見せた。アイデアは非競争的だから収穫は逓増すると言う。「知識経済」への移行が健全な経済成長を持続させると期待しているのである。

「ニュー・エコノミー」による経済成長を支える社会インフラの条件は次のとおりとされている。

・教育レベルが高いこと…知識ストックを活用しアイデアを生み出すことのできる人材の育成
・投資に対して市場の制限がないこと
・市場が開放されていること
・政府が浪費的政策(重税、非生産的な投資、特的業界との癒着など)を排し、反浪費的政策をとること

ニュー・エコノミーの観点からも、日本の政策には問題がある可能性がある。

【目次】イノベーションとは何か

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